MEDIA

メディア

食品ECのShopifyアプリの選び方|目的別の着眼点と費用を実務者が解説
EC2026.08.19約11分で読めます

食品ECのShopifyアプリの選び方|目的別の着眼点と費用を実務者が解説

こんな方へ 食品のネットショップをShopifyで始めた(またはこれから始める)ものの、アプリが多すぎて「結局どれを入れればいいのか」がわからない方。調べるほど候補が増えて、決められなくなっている方。 この記事でわかること 機能を実現する方法はアプリだけではないこと(テーマ→コーディング→アプリの順で考える) アプリを「目的から逆算して」選ぶ考え方 食品ECのShopifyアプリマトリクス(5つの目的別・代表アプリと費用の目安つき) アプリの費用と、入れすぎたときに実際に起きること 読み終わるころには アプリ選定における着眼点と現場で起きる注意事項を知れる。 「食品のストアには、結局どのアプリを入れればいいんだろう」。おすすめ○選の記事を読むほど候補が増えて、余計に決められなくなる。 先に結論を言います。アプリ選びで最初に決めるべきは「どのアプリを入れるか」ではなく、「お客様に何を提供したいか」。アプリは手段にすぎません。手段が目的化すると、維持コストとストアの表示速度が遅くなり、顧客体験が下がります。 ちなみに、Shopifyのアプリは、管理画面からいつでも追加も削除もできます。最初に全部を決め切る必要はなく、「試して、合わなければやめる」ができます。だからこの記事は、開店時に全部入れるためのリストではなく、必要になったときに見返せるように作りました。 この記事では、食品メーカーで7年、独立後はShopify構築支援100社以上に携わってきた筆者が、日本の食品ストアに必要なアプリを整理し、現場で実際に見てきた失敗と一緒に解説します。 とりあえず、おすすめアプリ○選の記事に載っていたものを順番に入れようかと思ってたんですが…。 それが、一番よくある失敗です。まず「お客様に何を提供したい店なのか」から一緒に整理しましょう。 重要:アプリは「お客様に何を提供するか」から逆算して選ぶ たとえば「定期購買アプリを入れる」は、目的ではありません。目的は「お客様が買い忘れなく、手間なく商品を受け取り続けられること(※ベネフィットでいうと、受け取ってどうなるのか?まで考えないといけない)」です。 その商品は、お客様の生活の中でどれくらいの消費サイクルなのか なくなるとしたら、お客様は「自動で届く」ことを嬉しいと感じるか 商品を「使い続ける」ことによって、お客様の生活にどのようなポジティブな変化をもたらすことができるか この3つに答えられないままサブスクアプリを入れても失敗します。逆に、答えがYESなら、定期購買はLTV(1人のお客様が生涯にもたらす売上)を大きく伸ばす武器になります。 アプリを検討するときは、必ず「アプリで、お客様の体験は何が変わるか」を一文で言えるようにしてください。言えないアプリは、あなたの店にはまだ要りません。 前提①:機能は「テーマ→コーディング→アプリ」の順で考える アプリストアを開く前に、知っておいてほしいことがあります。「この機能が欲しい」を実現する方法は、アプリを含めて3つあります。検討する順番も、この順です。 その機能を最初から持っているテーマを選ぶ:テーマ(ストアのデザインデータ)には、年齢確認表示・レビュー表示・付属品販売表示などの機能が標準で入っているものがあります。テーマの機能なら月額はかかりません。これからストアを作る方は、「絶対に必要な機能がテーマに入っているか」をテーマ選びの基準にしてください コーディングで足す:ちょっとした表示の変更や入力欄の追加など、少しのコードで実現できる機能は意外と多いです。一度書けば月額ゼロで動き続けます。制作会社や支援会社が付いているなら、「これはコードで済みませんか」と聞いてみる価値があります アプリを入れる:上の2つで実現できない機能を、月額を払って借りるのがアプリです。送り状や決済のように外部のサービスとつながる機能、定期購買のように裏側の仕組みが複雑な機能は、アプリの出番です 前提②:日本独特の商習慣に対応する必要がある 日本ならではの事情もあります。Shopifyは海外製のため、標準機能は海外の商習慣がベースです。配送日時指定、熨斗、代引き、コンビニ払い、フリガナ、インボイス対応の領収書。日本のお客様にとって「あって当たり前」のこれらの機能の多くは、標準では用意されておらず、アプリで補う必要があります。 つまり日本のストアは、「日本で普通に買い物ができる状態」を作る土台のアプリが先に必要になります。Shopifyの公式ブログでは85%以上のストアがアプリを利用していると紹介されており、平均的なストアのアプリ数は6個前後という調査もあります。 決済まわりで1つ注意です。Amazon Payは、日本のShopifyストアでは2025年1月に提供が終了しています。「Amazon Payを入れたい」は現在のShopifyでは選べないため、コンビニ払いや後払いを含む決済の受け皿はKOMOJUなどの決済サービスで設計するのが現実的です。 食品ECのShopifyアプリマトリクス:5つの目的 ここからが本題です。食品ストアに必要なアプリを「お客様に何を提供するか」で分けると、ざっくり5つの目的に整理できます。まず全体像を見てください。※5つを全部そろえる必要はありません。 目的 お客様が得られるもの 代表的なアプリ・サービス 費用の目安 ①土台 日本の通販として普通に買える Japan Order CSV、KOMOJU、住所チェックアプリ、領収書アプリ 無料〜少額有料 ②買いやすさ 初めてでも不安なく買える 配送日時指定 .amp、後払い決済、レビュー(Judge.me)、FAQ(テーマ標準で足りる場合も) 無料あり〜少額有料 ③贈りやすさ 大切な人にきちんと贈れる All in gift、AnyGift、配送&注文サポーター 少額有料 ④リピート 商品やコンテンツを手間なく受け取れる 定期購買、EasyPoints、CRM PLUS on LINE、再入荷通知 無料プランあり〜有料 ⑤業務効率 正確でスピーディーな出荷ができる(間接的な提供価値) プラスシッピング、Ship&co 無料あり 目的別の主要アプリと「入れる前に考える問い」 ①土台:日本で普通に買える状態を作る 最優先はここです。どんなに良い商品でも、住所入力でつまずいたり、希望の支払い方法がなかったりすれば、お客様は離脱します。 Japan Order CSV:注文データを、ヤマトB2クラウド・佐川e飛伝・日本郵便など国内運送会社の送り状発行ソフトに合う形で書き出せるアプリです。クール便や代引きにも対応しており、お客様は「日時指定どおり・正しい伝票で」荷物を受け取れます 住所チェックアプリ(住所バリデーション系):番地抜けなどの住所の入力ミスを、注文が確定する前に自動で見つけます。冷蔵・冷凍便は「再配達=品質劣化」に直結するため、食品ではとくに費用対効果が高い対策です 領収書アプリ(Quick Order Printerなど):宛名や但し書きを指定した領収書を、お客様が自分で発行できるようになります。食品は8%と10%の税率が混在するため、インボイス対応と税率別表示に対応しているかが選ぶときの確認ポイントです 年齢確認(NA Age Verificationなど):酒類を扱う場合のみ。テーマの機能や少しのコーディングで済むこともあるので、まず前提①の順番で確認してください。アプリを使うなら、サイト全体ではなく酒類のページやカートに限定して確認を出せるタイプが、他のお客様の体験を邪魔しません ②買いやすさ:初回購入の不安をなくす 配送日時指定 .amp:カートで配送希望日・時間帯を選べます。クール便の「不在で持ち戻り」を減らせるため、食品ではほぼ必須の部類です KOMOJU:正確にはアプリではなく、Shopifyにコンビニ払い・銀行振込・PayPay・後払いなどをまとめて追加できる決済サービスです。クレジットカードを使わない層(贈答・年配のお客様に多い)の取りこぼしを防ぎます。月額無料・決済手数料型なので固定費が増えないのも利点です レビューアプリ(Judge.meなど):購入後に自動でレビュー依頼が届き、次のお客様は「実際に届いた写真と感想」を見てから買えます。無料プランがあり、最初の1本として導入しやすいアプリです。レビューの表示だけならテーマが対応している場合もあります うちは制作会社にストアを作ってもらったんですが、アプリって自分で入れていいんでしょうか…? アプリの追加は、管理画面の「設定 → アプリと販売チャネル」から店側でできます。いま何が入っているかも、同じ画面で確認できます。ただしデザインの調整が必要になるアプリもあるので、入れる前に保守をお願いしている会社へ「このアプリを入れたい」と一報しておくとトラブルになりません。 ③贈りやすさ:食品ならではのギフト対応 食品ECはギフト需要が売上の柱になりやすい商材です。ここは海外製アプリに「熨斗」の概念がないため、国産アプリがほぼ必須になります。 All in gift:熨斗・ラッピング・メッセージカードと、住所を知らない相手にURLで贈れるeギフトの両対応。まず低コストでギフト対応を一通り揃えたい店に向きます AnyGift:eギフトに本格特化。法人ギフトやお中元・お歳暮を販路として育てたい規模の店向けで、料金も高めです 配送&注文サポーター:日時指定と一緒に、熨斗の表書きなど「注文時に聞きたいこと」の入力欄を追加できます ④リピート:もう一度買ってもらう仕組み 食品は単価が低く、1回売って終わりでは広告費も回収できません。利益はリピートから生まれます。 定期購買アプリ(Huckleberry「定期購買」・Mikawaya Subscriptionなど):米・コーヒー・調味料など消費サイクルが読める商品なら強力。国産でスキップ・解約もお客様が自分で操作でき、「解約しづらいサブスク」のストレスを避けられます ポイントアプリ(EasyPoints・どこポイなど):「またここで買う理由」を毎回の購入につけられます。実店舗がある店は、店頭とECでポイントを共通化できるタイプ(どこポイなど)を選ぶと体験がつながります LINE連携(CRM PLUS on LINEなど):ShopifyとLINE公式アカウントをつないで、購入履歴に応じてLINEの配信を出し分けられます。新規のお客様とリピーターに同じお知らせを送らなくてよくなります 再入荷通知アプリ(再入荷通知サポーターなど):季節限定・数量限定商品の再入荷をLINEやメールで自動で知らせ、「売り切れ=機会損失」を次の販売につなげます ⑤業務効率:出荷の裏側を回す プラスシッピング:運送会社と法人契約がなくても、アプリ上で送り状を発行できます。月額無料で、開業初期の「手書き送り状からの卒業」に最適です Ship&co:注文からワンクリックで送り状発行、追跡番号も自動反映。出荷件数が増えてきた店向けです 賞味期限やロット管理は、Shopifyアプリの守備範囲の外です。先入れ先出しを仕組み化したい規模になったら、ロジクラなどのWMS(倉庫管理システム)や物流委託という「アプリの外」の領域になります。 アプリの費用と、入れすぎたときに起きること ①表示が遅くなる 不要なアプリを5個削除しただけで読み込み時間が30%短縮された、ということもあります。食品ECは商品写真が命で、ただでさえページが重くなりやすいので、影響が出やすいです。 ②月額費用が気づかないうちに膨らむ 1個あたりの月額は数百円〜数千円でも、5個・10個と増えれば月1〜2万円の固定費です。粗利の薄い食品では、この固定費が利益を直接削ります。「売上の何%までをアプリ代に使うか」を先に決めておくと、判断がぶれません。 ③やめたアプリのコードが残り続ける アプリを解約しても、ストアのデザインデータ(テーマ)に書き込まれたコードがそのまま残る場合があります(埋め込み式の場合です。最近は残らないことも多いです)。残ったコードは表示速度を落とし続け、あとから原因を突き止めるのも大変です。アプリを入れるときは「やめるときに何が残るか」まで確認するのが実務の作法です。 実務で見てきた、アプリ選びの失敗 ここからは、Shopify支援の現場で実際に見てきた失敗です。どれも珍しい話ではなく、真面目に運営している店ほど起こります。 ①使っていないアプリに、課金が続いていた 支援に入ったストアの管理画面を拝見すると、かなりの確率で「入れたまま使っていない有料アプリ」が見つかります。導入した当時は目的があったはずが、運用が続かず、解約だけが忘れられている状態です。アプリは入れる時より「やめ時」の方が判断されにくいものです。だからこそ、月に一度はアプリ一覧と請求を見比べる習慣をおすすめしています。 ②「とりあえず定期購買」で、解約率が積み上がっていた サブスクが流行っているからと、消費サイクルの読めない商品に定期購買アプリを入れてしまったケースです。お客様は初回割引で入り、2回目が届く前に解約する。数字の上では「解約率の高いサブスク」が残り、手数料と管理の手間がかかっていました。 ③解約したアプリのコードが残って、サイトが重くなっていた 過去に試して解約したアプリのコードがテーマに残り続け、表示速度を落としていたケースです。アプリを整理するときは、アンインストールで終わりにせず、テーマ側のコードまで掃除する必要があります。 聞けば聞くほど、最初は少ない方がよさそうですね…。 そのとおりです。Shopifyはあとから何度でもアプリを足したり外したりできるので、開店時に全部そろえる必要はありません。私たちの感覚では、開店時は土台と買いやすさの数個で十分。アプリは「お客様の要望が見えてから」足す方が外しません。「日時指定できますか?」と聞かれてから日時指定を入れても、遅くないんです。 よくある質問 食品ECにおすすめのShopifyアプリは? 目的別に、送り状のJapan Order CSV、配送日時指定 .amp、レビューのJudge.me、ギフトのAll in gift、定期購買(Huckleberry)、LINE連携のCRM PLUS on LINEなどが代表格です(決済のKOMOJUはアプリではなく決済サービス)。 アプリを入れなくても機能を実現できますか? できます。テーマが標準で持っている場合や、少しのコーディングで実現できる場合があります。「テーマ→コーディング→アプリ」の順で検討すると、月額費用と表示速度の負担を最小限にできます。 無料アプリだけで運営できますか? 立ち上げ期は、かなりの部分を無料で賄えます。送り状はプラスシッピング(月額無料)、決済のKOMOJUは手数料型で固定費なし、レビューはJudge.meの無料プラン、問い合わせはShopify Inbox(無料)という構成が一例です。ただし日時指定やギフト対応など「日本の商習慣まわり」は少額の有料アプリが必要になることが多いです。 アプリ選びから相談できますか? できます。私たちENCARANCEは、食品ブランドに特化したShopify構築運用「ENCOMMERCE」として、アプリ選定を含むストアの構築から日々の運用・改善までを月額で引き受けています。すでに運営中のストアの「アプリの棚卸し」からのご相談も歓迎です。 まとめ:目的から選ぶ 機能は「テーマ→コーディング→アプリ」の順で検討する。アプリは月額で機能を借りる選択肢 アプリ選びは「何を入れるか」ではなく「お客様に何を提供するか」から逆算する 日本のストアは、日時指定・熨斗・決済・帳票などの「土台」が先に必要 目的は5つ:土台・買いやすさ・贈りやすさ・リピート・業務効率。開店時は前の2つで十分 あとから何度でも足したり外したりできるのがShopifyの良さ。最初に全部そろえなくていい これからストアを作る方は、まず食品のネット販売の始め方で全体の手順を掴んでから、この記事に戻ってきてください。アプリの選定や棚卸しに手が回らない場合は、月商の規模にかかわらず、お気軽にご相談ください。

記事を読む
食品ネット販売の始め方7ステップ
EC2026.08.18約9分で読めます

食品ネット販売の始め方7ステップ

こんな方へ これから食品をネット販売したい方。実店舗や卸で売ってきたものの、ECは未経験という食品事業者の方。 この記事でわかること 必要な許可・届出が、自分のケースでどれに当たるか 開店までにかかる費用と期間の目安 モール・無料カート・本格カートの選び方 開店までの7ステップと、失敗しやすい落とし穴 読み終わるころには 食品ネット販売のための準備事項がわかります 「うちの商品をネットでも売りたい。でも、食品って勝手に売っていいの?」この記事は、そんな段階の方に向けて書いています。 結論から言うと、食品のネット販売(EC)に必要な資格・手続きは、ほとんどの場合「食品衛生責任者」と「営業許可(または届出)」の2つです。そこに「食品表示ラベル」と、ネット販売ならではの「特定商取引法に基づく表記」のルールが加わります。 この記事では、食品メーカーで7年、独立後は100社以上の食品ECを支援してきた筆者が、必要な許可・費用の目安・始め方の7ステップを順番どおりに解説します。 お店の商品をネットでも売りたいんですが、何から手をつければいいのか分からなくて…。 大丈夫です。やることは大きく「許可取り」「表示準備」「売り場選定」の3つです。1つずつ見ていきましょう。 食品のネット販売に必要な許可・資格は、原則この2つ まず一番気になる「法律まわり」から片づけます。食品を継続的に販売するために必要なのは、原則として次の2つです。 食品衛生責任者:施設ごとに1名。1日の講習(受講料は自治体により約1万円前後)で取得でき、調理師・栄養士などの資格があれば講習は免除されます 営業許可または営業届出:何を・どう作って売るかで変わります。管轄は施設の所在地の保健所です 食品のネット販売で「許可」が必要か「届出」で済むかは、加工の有無で決まる 「で、うちはどれなの?」に答えるための早見表がこちらです。 ケース 必要な手続き 例 自分で製造・加工して売る(新規) 営業許可(菓子製造業、そうざい製造業など) 手作りの焼き菓子、ジャム、惣菜 実店舗の許可で作っている商品をそのまま売る そのまま販売できるケースが多い(許可の業種と売り方によるため保健所に確認) 製造小売店が自店の商品を通販に出す 仕入れた包装済み食品を常温で売る 原則、営業届出のみ(常温で長期保存できる包装食品のみなら届出も不要となるケースあり) 仕入れた調味料・菓子・乾物の販売 要冷蔵・要冷凍の食品を仕入れて売る 営業届出(冷蔵・冷凍設備の要件あり。食肉・魚介類は区分が異なる場合あり) 冷凍餃子の仕入れ販売 ※区分の最終判断は保健所が行います。販売開始前に必ず確認してください。 今の店の厨房で作って送るなら、新しい許可はいらないんですか? 持っている許可の業種と、売り方によります。実店舗の製造許可の範囲内で作っている商品なら、そのままネット販売を始められるケースも多いです。一方、飲食店営業の許可で作れるものと、菓子製造業などの許可が必要なものは分かれています。迷ったら、施設の図面を持って保健所に相談するのが一番早いです。無料で、その場で結論が出ることも多いですよ。 実店舗の営業許可があっても、家庭用のキッチンのままでは、ネット販売用の食品を製造・加工することはできません。営業許可は「施設」に対して出るもので、生活スペースと区画され、施設基準を満たした専用の場所が必要です。自宅の一部を改修して許可を取れるケースもありますが、基準は自治体ごとに異なるため、必ず事前に保健所へ確認してください。 酒類を売る場合だけは別枠で、保健所ではなく税務署への免許申請が必要です。2都道府県以上に販売するネット通販では「通信販売酒類小売業免許」が該当しますが、この免許で扱える酒類には制限があります(大手メーカーの主要銘柄は対象外となることが多い)。取扱予定の商品を決めてから、管轄の税務署に相談してください。 食品表示ラベルと、ネット販売ならではの表記ルール 食品表示法により、加工食品には名称・原材料名・添加物・内容量・期限・保存方法・製造者などを記載したラベルの貼付が義務付けられています。これは店頭でもネット販売でも同じです。 名称・原材料名(アレルゲン含む)・添加物 内容量・期限表示(消費期限または賞味期限)・保存方法 製造者または販売者の氏名と住所 栄養成分表示(原則義務。小規模事業者の免除規定あり) 現行の食品表示法で義務付けられているのは容器包装への表示で、商品ページへの掲載は義務ではありません。ただし、購入前に原材料やアレルゲンを確認できない商品ページでは、お客様は不安になり、買わずにページを閉じてしまいます(いわゆる「カゴ落ち」)。ページにも同じ内容を載せるのが実務上の基本です。 食品表示のルールは消費者庁が所管する食品表示法で定められていますが、表示の作り方の相談は最寄りの保健所で受け付けています。ラベル1枚の不備が回収騒ぎになる世界なので、最初に固めておきましょう。 ネット販売ならではの義務:特定商取引法に基づく表記 ECサイトには、事業者名・住所・電話番号・代金の支払方法・返品特約などを記載した「特定商取引法に基づく表記」のページが必要です。これは食品に限らず通信販売全般の義務で、BASEやShopifyには作成用のテンプレート機能があります。開店前のチェックリストに必ず入れてください。 売り場:モール・無料カート・本格カート 法律まわりが片づいたら、次は「どこで売るか」です。先に言葉の説明だけ。モールは楽天やAmazonのような「ネット上のショッピングセンター」に出店する形。カートは、自分のお店(サイト)をネット上に持つためのサービスのことです。無料でも始められる簡易なもの(BASE・STORESなど)と、月額を払って本格的に作り込めるもの(Shopifyなど)があります。 また表の中の手数料は2種類あります。販売手数料は「売上に応じてモールに払うお金」、決済手数料は「クレジットカードなどの支払い処理にかかるお金」です。 売り場 初期・月額の目安 手数料 向いている段階 モール(楽天・Amazonなど) 出店料は月数万円〜(Amazonには月額固定費のないプランもあり) 売上の8〜15%前後の販売手数料+各種費用 とにかく早く「探している人」に届けたい 無料カート(BASE・STORESなど) 0円〜 決済ごとに数% まず試したい・月商数十万円まで 本格カート(Shopifyなど) 月額数千円〜+構築費 決済手数料のみ(販売手数料なし) ブランドを作り、リピートで伸ばしたい 手数料を見ると、モールって結構引かれるんですね…。 はい。ただしモールが悪いわけではなく、役割が違うんです。モールは「集客を買う場所」、自社EC(自分のカートで作ったお店)は「顧客リストとブランドを育てる場所」。私たちが支援する場合も、モールをやめさせる提案はしません。売上の柱を分散させる「併売」が基本です。 食品はリピート購入が売上の軸になる商材です。お客様の連絡先(メール・LINE)を自社で持てるかどうかが、長期の利益を大きく左右します。モールでは顧客リストは手に入りません。だからこそ、どこかの段階で自社ECを持つ価値があります。 費用の目安:最小なら数万円、本格構築なら数十万円〜 「結局いくらかかるの?」に答えます。ざっくりの相場観です。 項目 目安 補足 食品衛生責任者の講習 約1万円前後 自治体により異なる 営業許可の申請手数料 1〜2万円前後 業種・自治体により異なる(届出は手数料なし) ラベル印刷・パッケージ 数千円〜 小ロット印刷サービスを活用 無料カートでの開店 0円〜 決済手数料のみ Shopifyでの本格構築(外注) 数十万円〜100万円超 最初から必要なわけではありません。無料カートで始めて移行も可能 配送資材・冷蔵冷凍便 商品による クール便は通常便より荷物1つあたり数百円増 最小構成なら、許可関連の実費+無料カートで数万円からスタートできます。「制作費500万円」のような見積もりが最初から必要なわけではありません。段階に合った投資額を選ぶことが大切です。 食品ネット販売の始め方:7つのステップ ここまでの内容を、実際に進める順番に並べます。新規に許可を取る場合は、講習や手続きの日程次第で開店まで1〜2ヶ月ほど見ておくと安心です(自治体・業種により異なります)。すでに許可がある方は、売り場の準備だけなので数週間で始められます。 何を・誰に売るか決める:主力商品と客単価、ギフト用か自分用のお取り寄せかを先に決めます 保健所に相談する:施設と売り方を伝えて、必要な許可・届出を確定させます 許可取得・食品衛生責任者の配置:講習の予約は早めに 食品表示ラベルを作る:原材料・アレルゲン・期限表示を固めます 売り場を選んで開店する:まず1つの販路に集中。特定商取引法に基づく表記のページも作成。写真と商品説明に一番時間をかけます 配送と梱包を設計する:常温/冷蔵/冷凍、送料設定、破損対策。日持ちの短い商品は予約販売にすると廃棄リスクを抑えられます。食品は「届いたときの状態」がレビューに直結します リピートの仕組みを作る:同梱チラシ、LINE・メルマガに登録してもらう仕掛け。ここまでが「開店」です ステップ7まで含めて開店、なんですね。売り始めたら終わりかと思ってました。 ここが食品ECの一番大事なところです。食品は単価が低く、1回売って終わりでは広告費も回収できません。2回目・3回目を買ってもらう仕組みまで作って、はじめて利益が出る構造になります。 失敗しやすい3つの落とし穴 ①「作って終わり」で更新が止まる サイトは開店がスタートです。ところが多くの事業者が、開店後の商品追加・季節企画・写真改善に手が回らず止まります。日々の運用に手が回らない体制の方は、外部にEC事業部ごと任せる選択肢もあります。 ②送料と梱包コストを甘く見る 食品は重く、割れ物や温度帯の制約もあります。送料を安く設定しすぎて「売れるほど赤字」になるケースは本当に多いです。送料は最初に原価計算に入れて、商品価格とセット販売(同梱数)で設計してください。 ③新規集客だけを追い続ける 広告の新規獲得コストは上がり続けています。新規だけを追うと、利益はどんどん薄くなります。買ってくれたお客様の連絡先(LINE・メルマガ)をリストにして、再購入を自分から作れる状態にしておくことが、食品ECの生命線です。 よくある質問 食品のネット販売に許可は必要ですか? 必要です。自分で製造・加工した食品を売る場合は保健所の営業許可、仕入れた包装済み食品を売る場合は多くのケースで営業届出が必要です。あわせて施設ごとに食品衛生責任者を1名置きます。詳細な区分は管轄の保健所で確認できます。 許可を取らずに販売するとどうなりますか? 食品衛生法違反として罰則の対象になるほか、販売停止や商品回収につながります。フリマアプリやSNS経由の販売でも同じルールが適用されます。「知らなかった」では済まないため、販売前に保健所へ確認してください。 個人や副業でも食品のネット販売はできますか? できます。法人である必要はなく、個人でも施設基準を満たして許可・届出を行えば販売できます。ただし家庭用のキッチンのままでは許可を取得できないため、区画された専用の施設か、菓子製造業などの許可を持つシェアキッチン・委託製造(OEM)の利用を検討してください。 モールと自社EC、どちらから始めるべきですか? 「早く売上が欲しい」ならモール、「利益とリピートを育てたい」なら自社ECです。理想は併売ですが、リソースが限られるなら、主力商品の客層がいる方から始めて、軌道に乗ったらもう一方を足すのが現実的です。 店を回しながら、片手間でも運用できますか? 始めることはできますが、ECは事業なのでリソースを割かないと確実に失敗します。一人で運営することが難しい場合は、外注や運用代行で任せる方法があります。私たちENCARANCEも、EC事業部を月額でレンタルするサービス(ENCOMMERCE)として、構築から運用・リピート施策までを一括で担っています。 まとめ:許可取り→表示準備→売り場選定→リピート設計の順で 必要な手続きは原則「食品衛生責任者」+「営業許可または届出」の2つ。迷ったら保健所へ 家庭用キッチンのままでは製造販売は不可。施設要件に注意 食品表示ラベルは商品にもページにも。ECでは特定商取引法に基づく表記も必須 売り場はモール・無料カート・本格カートの3択。役割が違うので併売が基本 食品ECはリピートで利益が出る商材。LINE・メルマガの仕掛けまで作って「開店」 食品のネット販売は、手続き自体は決して難しくありません。難しいのは、開店した後に「売れ続ける仕組み」を作ることです。ENCARANCEでは、これから食品のネット販売を始める方の無料相談を受け付けています。月商の規模にかかわらず、「うちの商品の場合はどの許可が必要か」「どの売り場から始めるべきか」といった最初の一歩の段階から、お気軽にご相談ください。

記事を読む