EC
食品ネット販売の始め方7ステップ
- こんな方へ
- これから食品をネット販売したい方。実店舗や卸で売ってきたものの、ECは未経験という食品事業者の方。
- この記事でわかること
-
- 必要な許可・届出が、自分のケースでどれに当たるか
- 開店までにかかる費用と期間の目安
- モール・無料カート・本格カートの選び方
- 開店までの7ステップと、失敗しやすい落とし穴
- 読み終わるころには
- 食品ネット販売のための準備事項がわかります
「うちの商品をネットでも売りたい。でも、食品って勝手に売っていいの?」この記事は、そんな段階の方に向けて書いています。
結論から言うと、食品のネット販売(EC)に必要な資格・手続きは、ほとんどの場合「食品衛生責任者」と「営業許可(または届出)」の2つです。そこに「食品表示ラベル」と、ネット販売ならではの「特定商取引法に基づく表記」のルールが加わります。
この記事では、食品メーカーで7年、独立後は100社以上の食品ECを支援してきた筆者が、必要な許可・費用の目安・始め方の7ステップを順番どおりに解説します。
お店の商品をネットでも売りたいんですが、何から手をつければいいのか分からなくて…。
大丈夫です。やることは大きく「許可取り」「表示準備」「売り場選定」の3つです。1つずつ見ていきましょう。
食品のネット販売に必要な許可・資格は、原則この2つ
まず一番気になる「法律まわり」から片づけます。食品を継続的に販売するために必要なのは、原則として次の2つです。
- 食品衛生責任者:施設ごとに1名。1日の講習(受講料は自治体により約1万円前後)で取得でき、調理師・栄養士などの資格があれば講習は免除されます
- 営業許可または営業届出:何を・どう作って売るかで変わります。管轄は施設の所在地の保健所です
食品のネット販売で「許可」が必要か「届出」で済むかは、加工の有無で決まる
「で、うちはどれなの?」に答えるための早見表がこちらです。
| ケース | 必要な手続き | 例 |
|---|---|---|
| 自分で製造・加工して売る(新規) | 営業許可(菓子製造業、そうざい製造業など) | 手作りの焼き菓子、ジャム、惣菜 |
| 実店舗の許可で作っている商品をそのまま売る | そのまま販売できるケースが多い(許可の業種と売り方によるため保健所に確認) | 製造小売店が自店の商品を通販に出す |
| 仕入れた包装済み食品を常温で売る | 原則、営業届出のみ(常温で長期保存できる包装食品のみなら届出も不要となるケースあり) | 仕入れた調味料・菓子・乾物の販売 |
| 要冷蔵・要冷凍の食品を仕入れて売る | 営業届出(冷蔵・冷凍設備の要件あり。食肉・魚介類は区分が異なる場合あり) | 冷凍餃子の仕入れ販売 |
※区分の最終判断は保健所が行います。販売開始前に必ず確認してください。
今の店の厨房で作って送るなら、新しい許可はいらないんですか?
持っている許可の業種と、売り方によります。実店舗の製造許可の範囲内で作っている商品なら、そのままネット販売を始められるケースも多いです。一方、飲食店営業の許可で作れるものと、菓子製造業などの許可が必要なものは分かれています。迷ったら、施設の図面を持って保健所に相談するのが一番早いです。無料で、その場で結論が出ることも多いですよ。
実店舗の営業許可があっても、家庭用のキッチンのままでは、ネット販売用の食品を製造・加工することはできません。営業許可は「施設」に対して出るもので、生活スペースと区画され、施設基準を満たした専用の場所が必要です。自宅の一部を改修して許可を取れるケースもありますが、基準は自治体ごとに異なるため、必ず事前に保健所へ確認してください。
酒類を売る場合だけは別枠で、保健所ではなく税務署への免許申請が必要です。2都道府県以上に販売するネット通販では「通信販売酒類小売業免許」が該当しますが、この免許で扱える酒類には制限があります(大手メーカーの主要銘柄は対象外となることが多い)。取扱予定の商品を決めてから、管轄の税務署に相談してください。
食品表示ラベルと、ネット販売ならではの表記ルール
食品表示法により、加工食品には名称・原材料名・添加物・内容量・期限・保存方法・製造者などを記載したラベルの貼付が義務付けられています。これは店頭でもネット販売でも同じです。
- 名称・原材料名(アレルゲン含む)・添加物
- 内容量・期限表示(消費期限または賞味期限)・保存方法
- 製造者または販売者の氏名と住所
- 栄養成分表示(原則義務。小規模事業者の免除規定あり)
現行の食品表示法で義務付けられているのは容器包装への表示で、商品ページへの掲載は義務ではありません。ただし、購入前に原材料やアレルゲンを確認できない商品ページでは、お客様は不安になり、買わずにページを閉じてしまいます(いわゆる「カゴ落ち」)。ページにも同じ内容を載せるのが実務上の基本です。
食品表示のルールは消費者庁が所管する食品表示法で定められていますが、表示の作り方の相談は最寄りの保健所で受け付けています。ラベル1枚の不備が回収騒ぎになる世界なので、最初に固めておきましょう。
ネット販売ならではの義務:特定商取引法に基づく表記
ECサイトには、事業者名・住所・電話番号・代金の支払方法・返品特約などを記載した「特定商取引法に基づく表記」のページが必要です。これは食品に限らず通信販売全般の義務で、BASEやShopifyには作成用のテンプレート機能があります。開店前のチェックリストに必ず入れてください。
売り場:モール・無料カート・本格カート
法律まわりが片づいたら、次は「どこで売るか」です。先に言葉の説明だけ。モールは楽天やAmazonのような「ネット上のショッピングセンター」に出店する形。カートは、自分のお店(サイト)をネット上に持つためのサービスのことです。無料でも始められる簡易なもの(BASE・STORESなど)と、月額を払って本格的に作り込めるもの(Shopifyなど)があります。
また表の中の手数料は2種類あります。販売手数料は「売上に応じてモールに払うお金」、決済手数料は「クレジットカードなどの支払い処理にかかるお金」です。
| 売り場 | 初期・月額の目安 | 手数料 | 向いている段階 |
|---|---|---|---|
| モール(楽天・Amazonなど) | 出店料は月数万円〜(Amazonには月額固定費のないプランもあり) | 売上の8〜15%前後の販売手数料+各種費用 | とにかく早く「探している人」に届けたい |
| 無料カート(BASE・STORESなど) | 0円〜 | 決済ごとに数% | まず試したい・月商数十万円まで |
| 本格カート(Shopifyなど) | 月額数千円〜+構築費 | 決済手数料のみ(販売手数料なし) | ブランドを作り、リピートで伸ばしたい |
手数料を見ると、モールって結構引かれるんですね…。
はい。ただしモールが悪いわけではなく、役割が違うんです。モールは「集客を買う場所」、自社EC(自分のカートで作ったお店)は「顧客リストとブランドを育てる場所」。私たちが支援する場合も、モールをやめさせる提案はしません。売上の柱を分散させる「併売」が基本です。
食品はリピート購入が売上の軸になる商材です。お客様の連絡先(メール・LINE)を自社で持てるかどうかが、長期の利益を大きく左右します。モールでは顧客リストは手に入りません。だからこそ、どこかの段階で自社ECを持つ価値があります。
費用の目安:最小なら数万円、本格構築なら数十万円〜
「結局いくらかかるの?」に答えます。ざっくりの相場観です。
| 項目 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者の講習 | 約1万円前後 | 自治体により異なる |
| 営業許可の申請手数料 | 1〜2万円前後 | 業種・自治体により異なる(届出は手数料なし) |
| ラベル印刷・パッケージ | 数千円〜 | 小ロット印刷サービスを活用 |
| 無料カートでの開店 | 0円〜 | 決済手数料のみ |
| Shopifyでの本格構築(外注) | 数十万円〜100万円超 | 最初から必要なわけではありません。無料カートで始めて移行も可能 |
| 配送資材・冷蔵冷凍便 | 商品による | クール便は通常便より荷物1つあたり数百円増 |
最小構成なら、許可関連の実費+無料カートで数万円からスタートできます。「制作費500万円」のような見積もりが最初から必要なわけではありません。段階に合った投資額を選ぶことが大切です。
食品ネット販売の始め方:7つのステップ
ここまでの内容を、実際に進める順番に並べます。新規に許可を取る場合は、講習や手続きの日程次第で開店まで1〜2ヶ月ほど見ておくと安心です(自治体・業種により異なります)。すでに許可がある方は、売り場の準備だけなので数週間で始められます。
- 何を・誰に売るか決める:主力商品と客単価、ギフト用か自分用のお取り寄せかを先に決めます
- 保健所に相談する:施設と売り方を伝えて、必要な許可・届出を確定させます
- 許可取得・食品衛生責任者の配置:講習の予約は早めに
- 食品表示ラベルを作る:原材料・アレルゲン・期限表示を固めます
- 売り場を選んで開店する:まず1つの販路に集中。特定商取引法に基づく表記のページも作成。写真と商品説明に一番時間をかけます
- 配送と梱包を設計する:常温/冷蔵/冷凍、送料設定、破損対策。日持ちの短い商品は予約販売にすると廃棄リスクを抑えられます。食品は「届いたときの状態」がレビューに直結します
- リピートの仕組みを作る:同梱チラシ、LINE・メルマガに登録してもらう仕掛け。ここまでが「開店」です
ステップ7まで含めて開店、なんですね。売り始めたら終わりかと思ってました。
ここが食品ECの一番大事なところです。食品は単価が低く、1回売って終わりでは広告費も回収できません。2回目・3回目を買ってもらう仕組みまで作って、はじめて利益が出る構造になります。
失敗しやすい3つの落とし穴
①「作って終わり」で更新が止まる
サイトは開店がスタートです。ところが多くの事業者が、開店後の商品追加・季節企画・写真改善に手が回らず止まります。日々の運用に手が回らない体制の方は、外部にEC事業部ごと任せる選択肢もあります。
②送料と梱包コストを甘く見る
食品は重く、割れ物や温度帯の制約もあります。送料を安く設定しすぎて「売れるほど赤字」になるケースは本当に多いです。送料は最初に原価計算に入れて、商品価格とセット販売(同梱数)で設計してください。
③新規集客だけを追い続ける
広告の新規獲得コストは上がり続けています。新規だけを追うと、利益はどんどん薄くなります。買ってくれたお客様の連絡先(LINE・メルマガ)をリストにして、再購入を自分から作れる状態にしておくことが、食品ECの生命線です。
よくある質問
食品のネット販売に許可は必要ですか?
必要です。自分で製造・加工した食品を売る場合は保健所の営業許可、仕入れた包装済み食品を売る場合は多くのケースで営業届出が必要です。あわせて施設ごとに食品衛生責任者を1名置きます。詳細な区分は管轄の保健所で確認できます。
許可を取らずに販売するとどうなりますか?
食品衛生法違反として罰則の対象になるほか、販売停止や商品回収につながります。フリマアプリやSNS経由の販売でも同じルールが適用されます。「知らなかった」では済まないため、販売前に保健所へ確認してください。
個人や副業でも食品のネット販売はできますか?
できます。法人である必要はなく、個人でも施設基準を満たして許可・届出を行えば販売できます。ただし家庭用のキッチンのままでは許可を取得できないため、区画された専用の施設か、菓子製造業などの許可を持つシェアキッチン・委託製造(OEM)の利用を検討してください。
モールと自社EC、どちらから始めるべきですか?
「早く売上が欲しい」ならモール、「利益とリピートを育てたい」なら自社ECです。理想は併売ですが、リソースが限られるなら、主力商品の客層がいる方から始めて、軌道に乗ったらもう一方を足すのが現実的です。
店を回しながら、片手間でも運用できますか?
始めることはできますが、ECは事業なのでリソースを割かないと確実に失敗します。一人で運営することが難しい場合は、外注や運用代行で任せる方法があります。私たちENCARANCEも、EC事業部を月額でレンタルするサービス(ENCOMMERCE)として、構築から運用・リピート施策までを一括で担っています。
まとめ:許可取り→表示準備→売り場選定→リピート設計の順で
- 必要な手続きは原則「食品衛生責任者」+「営業許可または届出」の2つ。迷ったら保健所へ
- 家庭用キッチンのままでは製造販売は不可。施設要件に注意
- 食品表示ラベルは商品にもページにも。ECでは特定商取引法に基づく表記も必須
- 売り場はモール・無料カート・本格カートの3択。役割が違うので併売が基本
- 食品ECはリピートで利益が出る商材。LINE・メルマガの仕掛けまで作って「開店」
食品のネット販売は、手続き自体は決して難しくありません。難しいのは、開店した後に「売れ続ける仕組み」を作ることです。ENCARANCEでは、これから食品のネット販売を始める方の無料相談を受け付けています。月商の規模にかかわらず、「うちの商品の場合はどの許可が必要か」「どの売り場から始めるべきか」といった最初の一歩の段階から、お気軽にご相談ください。