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AIの費用が膨らむ3つの原因|社員10〜30名の会社のトークン節約設計
- こんな方へ
- 社員10〜30名の会社で、専任のIT担当がいないまま、社員が各自でChatGPTやClaudeなどのAIを使い始めている社長・総務担当の方
- この記事でわかること
- AIの利用上限にすぐ届き、契約が増えていく3つの原因
- 社員10名前後・20名前後・30名以上で、先に手を打つべきこと
- 今日から始められる6つの手順と、月1回の振り返り方
- 読み終わるころには
- 自社でまず外す接続と、画像・社内ルールの渡し方を書き出せます
「AIの契約を増やしたのに、また上限に届いたと言われる」。
社員10〜30名の会社でAIの費用が膨らむのは、AIにムダなものを毎回読ませているからです。原因は次の3つです。
- 使わないツールまでつなぎっぱなしにしている
- 画像をとりあえず全部貼っている
- ルールや記憶を毎回ぜんぶ読ませている
当社の実測では、仕事の区切りで新しい会話に切り替えるだけで、1回の読み込み量が最大で約13分の1になりました。
どれも「便利そうだから」「答えの精度を上げたいから」と、良かれと思ってやっていることです。契約を増やす前に「AIに何を読ませるか」を決めれば、今の契約数のままで足りる場合が多くあります。
本文の数字のうち「当社」とあるものは、当社が社内で動かしているAIで測ったものです。記事の内容は2026年10月時点の情報にもとづいています。
トークンとは、AIが読み書きする量を数える単位です
AIは、文章や画像を「トークン」という単位に区切って読み書きします。ChatGPTやClaudeでは、このトークンの量で、料金か利用上限が決まります。
| 契約の形 | トークンで決まるもの | 使いすぎたとき |
|---|---|---|
| 定額(1人あたり月額のプラン) | 利用上限 | 上限に届き、しばらく使えなくなる |
| 従量(APIなど) | 料金 | 請求額が増える |
定額のプランでも、上限に届くたびにアカウントを足したり上位プランに替えたりすれば、費用は増えていきます。冒頭の「契約を増やしたのに上限に届く」は、この状態です。
AIが読むのは、質問の文章だけではありません。1回の相談で、次のものもまとめて読み込みます。
- その会話でやりとりした、それまでの文章と画像
- 貼り付けた資料やファイル
- つないでいるツールの説明書き
- 毎回読ませる設定やルール(カスタム指示など)
会話が長くなるほど、接続や画像、ルールが増えるほど、同じ一言の質問でも使用量は増えます。
専任のIT担当がいない会社ほど、トークン設計が必要です
10〜30名規模では、専任のIT担当がいないまま、社員が各自でAIを使い始めることが多く、次のことが起きやすくなります。
- 一人ひとりが別々にツールをつなぎ、使わない接続が積み上がる
- 画像や長いルール文を各自が好きに貼り、使用量が読めなくなる
- 上限に達するたびに、アカウントを追加して対処してしまう
人数が増えるほど、一人ひとりのムダな使い方が、そのまま会社の費用になります。5人なら社長が全員の使い方を見ていられますが、20人を超えると、誰が何をつないでいるのか分からなくなります。
原因①:使わないツール(MCP)までつなぎっぱなしにしている
MCPは、AIとGmail・Googleドライブ・Notion・Slackなどの外部ツールをつなぐ共通の仕組みです。ChatGPTでは「アプリ」、Claudeでは「コネクタ」として数クリックで追加でき、AIがメールを探したり、ドライブの資料を読んだりできるようになります。
MCPは便利な仕組みで、使うこと自体に問題はありません。問題は「つなぎっぱなし」です。
AIは、つないだツールの名前や使い方の説明書きを、その回で使わなくても毎回読み込みます。つなぎ先が5つ、10と増えるほど、「この文章を直して」と頼むだけでも、裏では全部のツールの説明書きを読ませていることになります。Claudeのヘルプでも、ツールやコネクタはトークンを多く使うので、会話に要らないアプリはオフにするよう案内されています。必要になったときだけ説明書きを読み込む仕組みを持つサービスもありますが、つなぎ先が多いほど負担が増える点は変わりません。
簡単につなげるぶん、試しにつないだツールがそのまま残っているかもしれません。
1か月使っていない接続は、いったん外して問題ありません。必要になったら、つなぎ直せば済みます。

原因②:画像をとりあえず全部貼っている
デザインの確認やバナーの比較、資料の読み取りで、画像を何枚もまとめて貼っていないでしょうか。「見せたほうが早い」と、修正案を10枚並べたり、画面を丸ごとスクリーンショットしたりする使い方は、読み込み量を大きく増やします。
Anthropic(Claudeの開発元)の開発者向け資料では、1,000×1,000ピクセルの画像1枚が約1,300トークンと案内されています。スマホのスクリーンショットはこれより大きいので、1回の相談で10枚貼れば、それだけで1万トークンを超えます。
さらに、同じ会話で質問を重ねるたびに、それまでに貼った画像も読み直されます。最初に10枚貼った会話で20回やりとりすれば、その10枚を20回読ませることになります。
見直し方は次のとおりです。
- 見たいのが画面の一部なら、その部分だけを切り取って貼る
- 比較は一度に全部ではなく、2〜3枚ずつに絞る
- 表やメールの文面は、画像ではなく文字で貼る
- 画像の確認が終わったら、新しい会話に切り替えて続ける
原因③:ルールや記憶を毎回ぜんぶ読ませている
AIの答えを安定させようとして、社内ルールや過去の経緯を毎回まとめて読ませていないでしょうか。
- 新しい会話のたびに、社内の文章ルールや会社概要を丸ごと貼り直している
- ChatGPTの「カスタム指示」やClaudeの「プロジェクトの指示」に、思いついたルールを書き足し続けている
- 前の作業を覚えておいてほしくて、これまでの経緯をまとめたメモを毎回貼っている
こうした指示やファイルは、会話のたびに丸ごと読み込まれます。ルールが10行なら軽く済みますが、何十ページにもなると、短い質問をするたびにその全部を読ませることになります。しかも、書き足すほど精度が上がるとは限りません。ルール同士がぶつかって、かえって答えがぶれる原因にもなります。
解決策は、ルールを「毎回読ませるもの」と「その仕事のときだけ読ませるもの」に分けることです。そのために使えるのが「スキル」という機能です。
スキルは、仕事ごとの手順書をAIに預けておく仕組みで、ClaudeやChatGPTで使えます。使えるかどうかはプランや設定によって違い、ChatGPTではBusiness・Enterpriseなどの法人向けプランが対象です(OpenAIのヘルプ)。たとえば「見積書の作り方」「ブログ記事の書き方」「問い合わせへの返信の型」を、それぞれ1つのスキルにしておきます。
ふだんのAIは、各スキルの名前と1〜2行の説明だけを読んでいます。「見積書を作って」と頼まれたときに初めて、見積書のスキルの本文を開きます。スキルを10個、20個と増やしても、毎回の読み込みは名前と説明の分しか増えません。
見直し方は次のとおりです。
- 毎回読ませるのは、どの仕事でも必ず守るルールだけにする(敬語の基準、社名や商品名の表記など)。1〜2ページに収める
- 仕事ごとの手順は、仕事単位でスキルに分ける
- スキルの説明文には「いつ使うか」を具体的に書く(例:「見積書・御見積の作成を頼まれたとき」)。説明があいまいだと、必要なときに開かれなかったり、関係ない仕事で開かれたりします
- 経緯のメモには「決まったこと」だけを残し、古いやりとりは消す
スキルの本文も、長ければそのぶん読み込みは重くなります。会社案内のPDFを丸ごと入れるより、その仕事に必要な事実と手順だけを書いたほうが、読み込みは軽く、答えもぶれにくくなります。
当社の実測:会話を切り替えるだけで、読み込み量は最大で約13分の1に
当社では、メールの確認や請求書の作成、予定の登録をAIエージェント(指示を受けて、ツールを自分で操作するAI)に任せています。費用を抑えながら安定して動かすために、AIが1回の依頼でどれだけ読み込んでいるかを定期的に測っています。
2026年9月の会話の記録から、3回以上依頼を受けた38回分について、依頼1回ごとの読み込み量(トークン数)を数えました。会話を始めた直後の読み込み量は、中央値で約5.6万トークン(3.6万〜6.1万)です。同じ会話を続けるほど増え、38回のうち17回は12万トークンを超えました。最も長く続いた会話では約73万トークンと、始めた直後の約13倍になっていました。増えた分のほとんどは、過去のやりとりの読み直しです。
当社では、次の3つを運用ルールにしています。
- 会話の切り替え:読み込み量が12万トークンを超え、しばらく依頼がないときは、新しい会話に切り替える。覚えておくべきことは「決まったこと」だけをファイルに残して引き継ぐ
- 手順はスキルに:請求書の作り方や予定の登録ルールはスキルにする。AIは普段1行の説明だけを読み、その仕事を頼まれたときだけ本文を開くので、仕事の種類を増やしても毎回の読み込みはほとんど増えない
- モデルの使い分け:メールの確認のような回数の多い仕事は料金の安いモデル(AIの種類)で動かし、判断の重い仕事だけ上位のモデルに回す
メール・請求書・予定の3つの業務をAIに任せて、2026年8月のAIの利用料は1.6万円でした(内訳は「AIエージェント稼働時間と費用の月次レポート 2026年8月」で公開しています)。
社員が使うChatGPTやClaudeでも、仕事の区切りごとに新しい会話を始めるだけで、1回あたりの読み込み量は下がります。Claudeのヘルプでも、長い会話で上限が近づいたら新しい会話を始めるよう案内されています。
新しい会話にしても、それまでの内容は引き継げます。会話の最後に「ここまでで決まったことを、次の会話に渡せるよう箇条書きでまとめて」と頼み、その要点を新しい会話の最初に貼ります。何十往復分のやりとりを読み直させるより、数行の要点を渡すほうがずっと軽く済みます。
社員数によって、先に手を打つことが変わります
| 規模 | 起きやすい問題 | 優先する対策 |
|---|---|---|
| 10名前後 | 社長や担当者が自己流で使い、ルールがない | 接続の棚卸しと、1〜2ページの共通ルールづくり |
| 20名前後 | 部署ごとにバラバラの使い方になる | 部署別に「つなぐもの」「読ませるもの」を決める |
| 30名以上 | 契約・アカウントが乱立し、全体が把握できない | 管理担当を1人決め、月1回使用量を確認する |
20名前後で部署別に決めるのは、部署によって必要な接続とルールが違うためです。営業はメールとカレンダー、経理はドライブの請求書フォルダ、というように、部署の仕事に合う接続だけを残します。ルールも、全社共通の短い版と、部署ごとのスキルに分けておくと、毎回の読み込みが軽くなります。
今日からできる設計の手順
- 管理担当を1人決める:兼任でよいので、AIの契約と使用量を見る人を置く
- 接続の棚卸し:全員の接続を書き出し、1か月使っていないものを外す
- 画像と会話のルール:「画像は1回の相談で3枚まで、画面は必要な所だけ切り取る」「仕事の区切りで新しい会話にし、要点だけ引き継ぐ」と決める
- 共通ルールを短くし、手順はスキルに分ける:毎回読ませるルールは1〜2ページにまとめ、仕事ごとの手順はスキルにする
- 契約の見直し:アカウントを増やす前に、使い方で解決できないかを確認する
- 月1回の振り返り:使用量を確認し、ムダの多い使い方を修正する
画像の枚数は、最初は少なめに決め、困る声が出たら増やします。共通ルールは、手順1で決めた管理担当が1枚目を作り、社員が直したい点を書き足していく形にすると続きます。書き足すときは、古くなったルールを同時に消すのがコツです。
月1回の振り返りで見られる項目は、プランによって違います。ClaudeのTeam・Enterpriseプランでは、管理画面で社員ごとの利用回数を確認できます。ChatGPTで社員ごとの利用状況を見られるのは、Enterpriseなどの一部のプランです。見られない場合は、各自の設定画面で上限にどれだけ近いかを報告してもらいます。利用の多い社員には、長い会話を何日も続けていないか、同じ資料やルールを毎回貼っていないかを聞きます。
取引先から預かった資料や顧客の情報は、会社名義の法人アカウントでだけ扱います。使用量を抑えるために社員個人の無料アカウントへ逃がすと、情報の管理ができなくなります。
よくある質問
社員が増えたら、アカウントも人数分契約すべきですか?
必ずしもそうではありません。使い方を整えるだけで、少ない契約数で足りる場合があります。まず使用量の内訳を確認してください。
10名程度の会社でも、ルールは必要ですか?
必要です。人数が少ないうちに決めておくほうが、定着しやすく、後から直すコストも小さくなります。
ルールを短くすると、答えの精度が落ちませんか?
落ちるとは限りません。どの仕事でも守ってほしいことだけを短く残し、細かい手順はスキルにしてその仕事のときだけ読ませるほうが、ルール同士がぶつからず、答えが安定しやすくなります。
新しい会話にすると、前の内容を忘れてしまいませんか?
要点を引き継げば問題ありません。会話の最後にAIに「決まったことを箇条書きでまとめて」と頼み、それを新しい会話の最初に貼ります。長いやりとりを丸ごと読み直させるより、読み込みはずっと軽くなります。
定額プランなら、使い方を気にしなくてもいいですか?
請求額は変わりませんが、上限に届くまでの早さが変わります。長い会話や画像の多い相談が続くと、月の途中で使えなくなる社員が出て、アカウントを足すきっかけになります。
- 定額プランでは、トークンを使いすぎると上限に届き、アカウントを足すたびに費用が増える
- MCPは便利だが、つないだツールの説明書きは使わない回も読み込まれる。使わない接続は外す
- 画像は必要な所だけ切り取り、同じ会話で何度も読み直させない
- 毎回読ませるルールや記憶は短く絞り、仕事ごとの手順はスキルにして必要なときだけ読ませる
- 仕事の区切りごとに要点をまとめて新しい会話に引き継ぎ、使用量は月1回確認する
中小企業のAI参謀「ENAI」では、部署ごとに増えたAIの契約と接続の棚卸しから、社内ルールの整理、スキルづくりまでを支援しています。