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AIに最初に任せる業務の選び方|社員10〜30名の会社は請求書から(渡すもの・頼む文・確かめる所)

公開:読了目安:約9分
AIに最初に任せる業務の選び方|社員10〜30名の会社は請求書から(渡すもの・頼む文・確かめる所)
こんな方へ
社員10〜30名の会社の社長で、ChatGPTなどの生成AIは契約したのに、どの仕事から任せればいいかが決まらない方
この記事でわかること
  • 最初にAIに任せる仕事を決める、3つの問い
  • 月末の請求書をChatGPTに回すときに渡すもの、決まりの書き方、頼む文、確かめる所
  • 経費・議事録との違いと、ChatGPTだけでは回らない仕事
  • 当社で起きた失敗と、防ぎ方
読み終わるころには
最初にAIに任せる仕事が1つ決まり、来月の月末に向けて、ChatGPTに渡す3つ(先月の請求書・取引先ごとの決まり・今月の明細)の準備を明日から始められます。人の仕事として残るもの(金額の確認、指定様式への転記、紙の集計)も分かります

「ChatGPTは全員分契約した。でも、うちのどの仕事から任せればいいのか決まらない」。社員10〜30名の会社の社長から、この相談をよくいただきます。契約して半年、使っているのは社長と営業の1人だけ、という会社も珍しくありません。

当社で最初にAIに回したのも、月末の請求書の下書きでした。そのとき実際に渡したものと頼んだ文、確かめた所を、この記事に書きます。私はAIの内製化支援を10社以上やってきて、中小企業向けのAIサービス ENAI を運営しています。独立する前は食品メーカーで営業と商品企画を7年、独立後はEC構築の支援を100社以上やりました。いまはマレーシアに住んでいます。

先に結論:最初に任せる仕事は、毎月か毎週必ずあって、前回のものを見本として渡せて、お客様に出す前に人が確かめられる仕事から選びます。社員10〜30名の会社なら、たいてい月末の請求書がこれに当てはまります。請求書を人が作っていない会社は、経費の仕分けか会議の議事録です。

最初に任せる仕事は、毎月必ずある仕事から選びます

相談に来る社長は、だいたい「一番時間を取られている仕事」から任せようとします。内装工事なら見積の拾い出し、製造なら図面を見て決める見積です。気持ちは分かりますが、ここから始めるとまず止まります。値段を決める仕事は毎回中身が違うので、見本を渡しても同じ形では出てきません。間違えたときに取り返しもつきません。

最初の1つは、効果の大きさより、来月も再来月も確実に回ることを優先したほうがうまくいきます。私が社長に聞くのは3つだけです。毎月か毎週、必ずあるか。前回のものを見本として渡せるか。お客様に出す前に、人が確かめる時間があるか。年に数回の仕事だと、次に回ってくるころには頼み方を忘れています。見本は、先月の請求書や前回の議事録のように完成形が手元にあれば足ります。確かめる時間のほうは、AIが作るのが下書きまでだからです。取れない仕事は最初には向きません。

3つとも「はい」で、社長か事務が手で作っているもの。月末の請求書がまずそれです。見積の値段決め、契約、お客様への送信そのものは任せません。

請求書の下書きは、渡すものが3つそろえば来月の月末から始められます

当社の請求は取引先ごとに決まりが違い、月によって金額が変わる先もあります。手で作ると1件5分、月末にまとめてやると夜までかかっていました。今はスマホで「今月の請求書、下書きお願い」と頼むと、2分後に取引先ごとの下書きができています。

ここまで自動にするには仕組みが要りますが、ChatGPTに貼って頼む形でも、渡すものは同じ3つです。

渡すもの 中身
先月の請求書 ExcelかPDFをそのまま貼る。宛名・明細の並び・税の書き方の見本になる
取引先ごとの決まり 1社につき1〜3行。単価表が要る先は単価表のExcelも一緒に。下に書き方の例
今月の明細 品名・数量・単価の表。工事の出来高請求なら、契約時の見積明細と今月の出来高の%

取引先ごとの決まりは、社長の頭の中にあるものを、1社ずつ言葉にするだけです。当社はNotion(社内の情報を置いておくソフト)に書いていますが、スプレッドシートでも、ChatGPTに毎回貼る1枚のメモでも構いません。書き方はこのくらいで足ります。

  • A社:月末締め。税抜で端数は切り捨て。振込手数料は先方負担と備考に書く
  • B社:毎月定額。前月と同じ金額。宛名は本社ではなく支店
  • C社:出来高の90%を請求。安全協力費1%を控除。支払いは翌月末
  • D社:単価は添付の単価表のとおり。100個以上は単価表の右の列。支給材の分は控除。単価の改定は毎年4月

社名と条件は書き方の例ですが、当社の決まりもこの粒度です。品番が数百行ある単価表は、書き写さずにExcelごと渡します。40社分を一度に書く必要はなく、最初の月は付き合いの長い1社だけで始めてください。

今月の明細は、納品書を集計した表でも、現場から聞いた出来高の%でも構いません。紙の納品書が山になっている会社は、レシートと同じで、撮って貼れば表にはなります。ただ枚数が多いと数量の読み違いが出ます。何枚までなら実用になるかは当社に実測がないので、最初の月は1社分を10枚ずつ貼って、出てきた表を納品書と突き合わせる所から始めてください。先方の検収明細で請求する先は、自社の納品書ではなく、届いた検収明細のほうを今月の明細として貼ります。元請け指定の様式への転記や押印は、人の仕事として残ります。

頼む文は、凝らなくて大丈夫です。私はこう頼んでいます。

先月の請求書と同じ形で、今月分の下書きを作ってください。決まりは上のメモのとおり。明細は下の表です。合計と税も出してください。

先月の形に合わせて作りました。端数は切り捨てています。

返ってくるのは、こういう表です(金額は例)。

品名 数量 単価 金額
○○工事 10月分(出来高90%) 1 450,000 450,000
安全協力費(1%控除) -4,500
税抜合計 445,500
消費税(10%) 44,550
合計 490,050

これを自社の請求書のExcelの型に貼って整えます。PDFやExcelの添付は無料プランでも使えますが、無料は1日3ファイルまでなので、先月の請求書・単価表・今月の明細で使い切ります。有料プランは3時間に80ファイルまでです(OpenAIの公式ヘルプ、2026年10月時点)。Excelのまま返してもらえることもありますが、最初の月は貼って整えるつもりでいたほうが当てが外れません。貼って整える形だと、最初の月は手で作るのと時間がほぼ変わりません。減るのは2か月目からです。

確かめるのは、合計と税、宛名、前月との差額、支払期限の4つです。私は毎回この順で見ています。4つに絞っているのは、毎回全部を見ていたら続かないからです。AIが間違えやすいのは、決まりの読み違い(端数の処理や控除の抜け)と、明細の数量の転記です。合計が前月と大きく違うときは、明細の行を1本ずつ見ます。ここで直した点は、決まりのメモに1行足しておくと、翌月から同じ間違いが出なくなります。見本の作り方は「ChatGPTを使っても社長のチェックが減らない理由と、3段階の解決法」にも書きました。

経費と議事録は、まとめて貼る形で始めます

経費をChatGPTだけでやるなら、月に1回、レシートをまとめて撮って貼り、「日付・金額・店名・科目の表にして」と頼みます。領収書を探して一枚ずつ開く手間は残りますが、打ち込みはなくなります。科目の決まりは、請求書と同じで最初に数行書いておきます。当社は仕組みを作って、届いた時点でAIが拾う形にしていますが、それは2つ目以降の話です。

議事録は、Zoom や Google Meet の文字起こしと、前回の議事録を一緒に貼って、「この形で決定事項と次のアクションにまとめて」と頼みます。当社の支援先では、2時間かけていた議事録づくりが、下書きを5分確かめるだけになりました。見本を渡しているので、担当者が変わっても同じ形で出てきます。部署の1つの業務から全社に広げた手順は「議事録作成を2時間から5分に|AI議事録を社内に定着させる4つの手順」に書いています。

メールの見張りと期限の点検は、ChatGPTでは回りません

当社のAIは、平日の日中に2時間おきにメールと取引先とのチャットを見て、返事が要るものを要約と返信の下書きつきで知らせてきます。毎朝8時には、期限が近い案件とその日の予定もまとめてきます。AIから社外にメールを送れない設定にしてあるので、送るのは必ず人です。

この2つは、決まった時刻に自分で動く仕組みがないと回りません。職人や取引先との連絡がLINEや電話、注文書がFAXという会社では、見張る相手がそもそもメールにいないので、ここは飛ばして請求書から始めてください。紙やFAXで来るものは、誰かが表に打ち込んだあとがAIの出番です。仕組みが要る仕事は、請求書か経費か議事録のどれか1つがChatGPTで回ってから考えれば間に合います。

請求書を事務がやっている会社は、社長が最初の1回を隣でやります

請求書を社長が自分で作っている会社なら、社長がそのまま始めます。事務が作っている会社では、社長が事務の隣に座って、最初の1回を一緒にやります。渡すもの3つをそろえるのは社長の仕事です。決まりは社長の頭の中にあり、事務は「社長がそう言ったから」で動いているので、言葉にできるのは社長だけです。

1回で足ります。自分の仕事で一度うまくいくと、翌月からは事務が自分で頼むようになります。頼む文と決まりのメモは、事務が開ける場所に置いておいてください。

始める前に、1枚の紙に3行だけ書いておくと、あとが楽です。AIに任せる仕事(請求書の下書き)、人がやる仕事(合計と宛名の確認、送付)、浮いた時間で何をするか。3行目を書かずに始めると、浮いた時間に別の作業が入って、事務には「AIで仕事が増えた」と見えます。

1か月回したら、直した箇所を見ます。毎回同じ所を直しているなら、決まりのメモか見本を直します。直す所がほとんど無くなったら、2つ目の仕事に進みます。誰が最初に使い、どう2人目に広げるかは「AIが社内に定着しない理由と対策|研修より先に、社長かエースが一番使う」に書きました。

当社で起きた失敗と、防ぎ方

仕組みを動かし始めてから、AIが人に確認を求めたまま待ちに入って、そのまま止まっていたことがありました。質問を投げたら別の作業に進むように直しています。もう1つ、チャットの返信で宛先を誤って、送ってはいけない相手に送りかけたこともあります。それ以来、送信前に必ず人が見ています。

送る前に人が見る手順を残しているのは、この2つがあったからです。

当社と支援先で起きたこと

当社は社内にAIを置いて、請求書の発行から記事のルールづくりまでを任せています。9月の記録を見返したら915件で、相談や壁打ちはそのうち23件しかありませんでした。残りは全部作業です。8月の件数と費用の内訳は「AIエージェント稼働時間と費用の月次レポート 2026年8月」で公開しています。

当社が支援した社員10名の会社では、まず私が社長に使い方をお伝えし、社長が社内に広げました。いまは社員10名全員が毎日AIを使い、営業の外回りに使える日が週に丸一日増えています。

「中小企業のAI参謀|ENAI」では、この記事の「渡すもの3つ」をそろえる所、つまり業務の棚卸しと取引先ごとの決まりの書き出しを、社長と一緒にやっています。ここで止まる社長が一番多いからです。

よくある質問

AIに最初に任せる業務は、何がいいですか?

月末の請求書の下書きです。請求書を人が作っていない会社なら、経費の仕分けか議事録です。

毎月中身が変わる請求書でも、AIに任せられますか?

変わるのは明細で、形と決まりは変わらないので、任せられます。先月の請求書と取引先ごとの決まりに加えて、今月の明細の表を渡します。納品書が紙の会社は、撮って貼って表にするか、表に打ち込む所までは人がやり、そこから先をAIに渡します。

取引先の社名や金額をChatGPTに貼っても大丈夫ですか?

当社は取引先名と金額をAIに渡しています。仕事の情報で、個人情報ではないので。入れないと決めているのは、お客様の個人情報と、契約で秘密保持がかかっている内容です。ChatGPTの場合、Enterprise などの法人向けに入れた内容は学習に使わないと公式に書かれていて、個人向けのプランは設定次第です(OpenAIの公式ヘルプ)。契約しているプランと設定を確かめて、入れてはいけないものを1行で決めて社内に伝えます。秘密保持がかかっている先は、社名を伏せ字にして貼れば済みます。

ChatGPTだけで始められますか?それとも何か作る必要がありますか?

請求書の下書き、経費の仕分け、議事録の3つは、ChatGPTに見本と決まりを貼る形で始められます。契約しているAIの月額のほかに費用はかかりません。メールの見張りと期限の点検は、決まった時刻に自分で動く仕組みが要るので、ChatGPTだけでは回りません。

  • 最初は月末の請求書の下書き。人が作っていない会社は経費か議事録
  • ChatGPTに渡すのは、先月の請求書・取引先ごとの決まり(1社1〜3行)・今月の明細の3つ
  • 確かめるのは合計と税・宛名・前月との差額・支払期限。直した点は決まりのメモに1行足す
  • メールの見張りと期限の点検は仕組みが要る。LINE・FAX中心の会社も、請求書からなら始められる