AI
AIが社内に定着しない理由と対策|研修より先に、社長かエースが一番使う(社員10〜30名の会社)
- こんな方へ
- 社員10〜30名の会社の社長で、ChatGPTなどの生成AIを社員に配ったり研修を受けさせたりしたのに、使っているのは1〜2人という方
- この記事でわかること
- 研修をしても、社員がAIを使い続けない理由
- 研修より先に、社長かエースが社内で一番使えるようになるべき理由
- 一番使う人が、毎月の業務を1つAIに回す進め方
- その1人から、2人目、3人目に広げる方法
- 読み終わるころには
- 研修に頼らずにAIを社内に広げる順番(誰が最初に使い、どの業務から始め、どう2人目に広げるか)が分かり、来週から始められます
「ChatGPTを全員分契約して、研修も受けさせた。それなのに、3か月たって使っているのは2人だけ」。社員10〜30名の会社の社長から、よく聞く話です。
小さな会社でAIを社内に広げたいなら、研修より先に、社長かエース1人が社内で一番AIを使えるようになることです。
先に結論:社員10〜30名の会社でAIを社内に広げるには、全員に研修をする前に、社長かエース1人が社内で一番AIを使える人になります。研修のあと自分の仕事でAIを使い続ける人は、10人に1人いるかいないかだからです。
- 一番使う人は、社長本人か、仕事の早い社員1人(エース)
- その人が、毎月必ずある業務を1つAIに回す(例:月末の請求書や、毎月の運用レポートの下書き)
- 広げるのは、その人の仕事が目に見えて早くなってから。隣の人の仕事を1つ、一緒にAIに回す
研修のあと、ほとんどの人は元の仕事のやり方に戻ります
研修をしても、前のめりになって、終わったあとも自分の仕事でAIを使い続ける人は、10人に1人いるかいないかです。当社が研修や支援の現場で見てきた実感です。
研修の場では、みんな「便利だね」と言います。ところが翌日から目の前の仕事が始まると、元のやり方に戻ります。研修が1回きりで終わる会社ほど、この傾向がはっきり出ます。
戻ってしまうのは、本人のやる気の問題ではありません。
- 慣れたやり方のほうが早い:AIに頼む文を考えるより、いつもどおり自分でやったほうが、その日は早く終わる
- 自分の仕事のどこで使うかが分からない:研修で見た例は、よその会社の仕事の話
- 困ったときに聞ける人が社内にいない:うまくいかないと、そこで止まる
3つとも、社内にAIを毎日使っている人が1人いて、社長が「AIのことはその人に聞いて」と決めていれば解けます。その人の仕事を見れば使いどころが分かり、困ったらその人に聞けるからです。
実際、小さな会社ほど使い方が社員任せになりがちです。東京商工リサーチの調査(2026年4月公表、有効回答6,327社)では、生成AIを「会社として活用を推進」している中小企業は19.1%で、「個人で活用していることもある」が27.7%でした(東京商工リサーチ)。会社として決めずに、使える人が個人で使っているだけの会社のほうが多いということです。
研修より先に、社長かエースが社内で一番使えるようになります
一番向いているのは、社長本人です。社長が自分で使っていないと、社員に「この仕事にAIを使って」と言えません。社長が使っているものは、社員もまねします。
社長が毎日触る時間を取れないなら、すでにAIを使っている社員に任せます。使っている人がいなければ、仕事が早くて、新しいやり方を面白がる社員を1人選びます。この記事では、この社員を「エース」と呼びます。
すでに使っている社員がいるのに広がらないのは、その人が自分の仕事で使っているだけで、社内で聞かれる役になっていないからです。社長からその人に、仕事として頼みます。
全員に少しずつ覚えてもらうほうが、早くないですか?
全員が少しずつだと、困ったときに聞ける人がいないままです。まず1人が社内で一番使えるようになるほうが、結局早く広がります。
決めたら、社長から全員に「AIのことは〇〇さんに聞いて」と伝えます。あわせて、お客様の個人情報など、AIに入れてはいけない情報を1行で決めて伝えておきます。
一番使う人は、最初の1週間、毎日1回は自分の仕事をAIに頼みます。メールの下書きでも、資料の要約でも構いません。触る時間は、毎週金曜の夕方30分のように、仕事の予定として先に押さえておきます。「手が空いたら」にすると、いつまでも始まりません。すでに毎日使っている人なら、この1週間は飛ばして構いません。
頼み方で迷ったら、完成形の見本を1つ渡すのが近道です。やり方は「ChatGPTを使っても社長のチェックが減らない理由と、3段階の解決法」に書きました。
一番使う人は、毎月の業務を1つAIに回すところから始めます
2週目に入ったら、毎月必ずある業務を1つ選んで、AIに回します。AIに下書きを作らせ、人が確かめて出す形です。社長なら月末の請求書、制作や運用の社員なら毎月の運用レポートのように、一番使う人がいま自分でやっている業務から選びます。
選ぶのは、毎月か毎週必ずあり、前回のものを見本にでき、お客様に出す前に人が確かめられる業務です。見積書のように毎回中身が変わる業務や、値段の交渉のように判断が要る業務は、最初の1つには選びません。
回す前に、次の3つを1枚の紙に書きます。
| 社長の場合 | 制作の社員の場合 | |
|---|---|---|
| AIに回す仕事 | 月末の請求書の下書き | 毎月の運用レポートの下書き |
| 人がやる仕事 | 金額の確認と送付 | 数字の確認とお客様への一言 |
| 浮いた時間の使い道 | 既存のお客様への連絡 | 次の月の改善案づくり |
3行目を先に決めておくのが大事です。決めずにAIに回すと、浮いた時間に別の作業が入り、「AIを使うと仕事が増える」と受け取られます。
最初の1か月と、そのあとの進め方
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1週目 | 社長が全員に「AIのことは〇〇さんに聞いて」と伝える。最初の業務に今何分かかっているかを書き出す |
| 2週目 | 1枚の紙を書き、前回のものを見本に、下書きをAIに作らせる |
| 3週目 | AIの下書きで実際に出してみて、直したところをメモする |
| 4週目 | かかった時間を、1週目に書き出した時間と比べる |
| 5週目から | 社長が2人目を決め、一番使う人が隣について、その人の業務を1つ一緒にAIに回す |
時間が減っていれば、2人目に広げる材料になります。5週目からの隣につく時間は、1回1時間ほどを目安に、社長が仕事の時間として認めます。締め切りを抱えた社員に「空いた時間でやって」と頼むと、2人目はいつまでも始まりません。
2人目からは、一番使う人が隣の人の仕事を1つ一緒にAIに回します
一番使う人の仕事が目に見えて早くなると、周りが「それ、どうやったの」と聞きに来ます。聞きに来た人がいればその人、いなければ社長が1人指名します。
2人目には、研修ではなく、その人の毎月の業務を1つ選んで、一番使う人が隣について一緒にAIに回します。自分の仕事で一度うまくいくと、次からは自分で頼むようになります。2人目が回せるようになったら、2人目が3人目の隣につきます。全員に広げる段階では、社長がAIの活用を査定のKPIに入れると、確実に続きます。
研修をするなら、このタイミングが向いています。社内の実際の業務でAIを使った例を見せられるので、聞いた人が自分の仕事に置き換えやすくなります。
部署の1つの業務から全社に広げた例は、「議事録作成を2時間から5分に|AI議事録を社内に定着させる4つの手順」で紹介しています。
支援先では、社員10名全員が毎日AIを使うようになりました
当社が支援した社員10名の会社では、まず当社が社長に使い方をお伝えし、社長が社内に広げました。AIの活用を査定のKPIに入れて、全員が確実に続けられる形にしています。いまは社員10名全員が毎日AIを使い、営業の外回りに使える日も週に丸一日増えました。
当社では、AIで浮いた時間をお客様と新しいサービスに使っています
当社は、請求書の発行から記事のルールづくりまで、社内の仕事をAIに回しています。2026年8月にAIが片づけた仕事は194件で、人がやれば約280時間かかる量でした。費用はAI本体の実費が1.6万円、Notion・APIの利用料を含めても月5万円前後です。内訳は「AIエージェント稼働時間と費用の月次レポート 2026年8月」で公開しています。
浮いた時間は、お客様とのやりとりと、新しいサービスづくり、月額でお受けしている仕事の中でお渡しする成果物を増やすことに使っています。
当社の「中小企業のAI参謀|ENAI」では、社長かエース社員の方1名と1対1で、利益につながる業務を1つずつAIに回していく進め方もご用意しています。
よくある質問
社員がAIを使わず、社内に広がらないのはなぜですか?
慣れたやり方のほうが早く、自分の仕事のどこで使うかが分からず、困ったときに聞ける人が社内にいないからです。当社が見てきた範囲では、研修後に自分の仕事でAIを使い続ける人は10人に1人いるかどうかです。社員10〜30名の会社なら、研修より先に、社長かエース1人が社内で一番AIを使えるようになると広がりやすくなります。
研修はやらないほうがいいですか?
やるなら、一番使う人が1か月使ったあとにします。社内の業務で実際に使った例を見せられるので、聞いた人が自分の仕事に置き換えやすくなります。
社長がAIに詳しくなくても始められますか?
始められます。社長が一番使う人になるなら、自分の毎月の仕事を1つ、AIに頼むところから始めます。社長が難しければ、すでにAIを使っている社員(いなければ仕事の早い社員)に任せて、社長は1枚の紙で「浮いた時間の使い道」を決める役に回ります。
ChatGPTは全員分契約したほうがいいですか?
最初から全員分をそろえる必要はありません。一番使う人の分から始めて、使う人が増えたら足していくと、使われない分の費用がかかりません。すでに全員分を契約しているなら、まず1か月、一番使う人の使い方を広げてから、使われていない分を見直します。契約を増やす前に見直したい使い方は「AIの費用が膨らむ3つの原因」にまとめています。
- 研修のあとAIを使い続ける人は、10人に1人いるかいないか(当社の実感)
- 研修より先に、社長かエース1人が社内で一番AIを使えるようになる
- 一番使う人が、毎月の業務を1つAIに回し、浮いた時間の使い道を先に決める
- 2人目からは、隣について、その人の業務を1つ一緒にAIに回す
社内で一番AIを使う人の決め方や、最初にAIに回す業務の選び方から、ご相談いただけます。